河野慶三コラム 人事・総務の方へ

第7回 衛生推進者を選任しましょう

衛生推進者の画像

 常時50人以上の労働者が働いている事業場では、小規模であっても、国家資格である「衛生管理者」の有資格者を選任することが必要ですが、50人未満の事業場には衛生管理者の選任義務はありません(労働安全衛生法第12条)。

 しかし、小規模事業場でも現実の問題として、産業保健にかかわる業務がゼロというわけではありません。好むと好まざるとにかかわらず、健康診断の実施、健康上の問題による休務・職場復帰の実務など何らかの業務が発生します。多くの場合、こうした業務については、人事総務や庶務担当の誰かが他の仕事と掛け持ちで担当しているのが実情ですが、往往にしてこれがその担当者の業務分担として明示されておらず、当の担当者もそれを疑問に思っていません。また、従業員は誰がそうした業務を担当しているのかを知りません。

 たとえば、メンタルヘルス不調で休務している従業員への対応には、それなりの知識・スキルが必要です。守秘義務の問題もあります。けれども、担当者の多くはそのための教育を受けておらず、不安を抱えながら作業を進めています。当然のことですが、対応が適切でない事態も生じます。

 労働安全衛生法は、常時10人以上の労働者が働いている事業場では、「衛生推進者」を選任し、事業場の見えやすいところに氏名を掲示するなどその周知を義務付けています(第12条の2)。この条文には罰則はついていませんが、強制規定です。大企業であっても出先の営業所などは50人未満である事業場が数多くあります。こうした事業場にも衛生推進者の選任義務がかかっていることに留意してください。

 講演後に小規模事業場の産業保健担当者と話をしていると、この選任義務を知らない人によく出くわします。次に示す条件のどれかを満たせば、衛生推進者には誰でもなることができます。

  • 大学または高専卒業後に1年以上衛生の実務に従事している
  • 高等学校卒業後に3年以上衛生の実務に従事している
  • 5年以上衛生の実務に従事している
  • 衛生推進者養成講習を修了している
  • 衛生管理者・労働衛生コンサルタントの資格がある

 1〜3、5のいずれかに該当する方は事業者から選任してもらうことによって、直ちに衛生推進者になることができます。該当しない場合は、4の「衛生推進者養成講習」を受講して事業者に選任してもらいます。この講習は5時間で、誰でも受講することができます。講習では、@作業環境管理・作業管理 A健康の保持増進 B労働衛生教育 C労働衛生関係法令についての講義(座学)が行われます。この講習を修了してもすぐに実務ができるようになるわけではありませんが、実務に必要な核となる知識を得ることができます。その意味で、1〜3に該当する方にも受講することが推奨されています。

 すでにお話したように、10人以上50人未満の事業場では、衛生推進者を選任することは事業者の法的義務なので、この研修受講に要する時間や費用は事業者が負担します。

 産業保健業務が担当業務の一部として管理監督者から指示されていないにもかかわらずしなければならない立場にいる方は、事業者に衛生推進者として選任してもらい、その役割を担っていることを事業場の労働者に認知してもらうようにしてください。そのことが、日々の活動を容易にし、成果をあげることに繋がります。産業保健業務を行っている部署の管理監督者の方々には、担当者を衛生推進者に選任するようお願いします。

 衛生推進者養成講習の実施機関や講習日、費用などについては、インターネット検索で「衛生推進者」と入力すれば簡単に情報を得ることができます。

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このコラムの執筆者プロフィール

河野慶三先生

河野 慶三 氏(新横浜ウエルネスセンター所長)

名古屋大学第一内科にて、神経内科・心身医学について臨床研究。
厚生省・労働省技官として各種施策に携わる。
産業医科大学、自治医科大学助教授など歴任。
富士ゼロックスにて17年間にわたり産業医活動。
河野慶三産業医事務所設立。
日本産業カウンセラー協会会長歴任。
平成29年より新横浜ウエルネスセンター所長に就任。