バイオコミュニケーションズ株式会社
Dr.Kohnoの産業医ワンポイント!

『河野慶三コラム』人事・総務の方へ

第11回 テレワーク 制度と職場復帰

 政府が主導する働き方改革の動きを受けて、企業でテレワーク制度の導入が広がっています。テレワーク制度は、あらかじめ設定した曜日には出社せず、自宅あるいは自宅近くにあるサテライトオフィスで業務に従事する就業形態のことです。

 この制度の最大の利点は、通勤時間を短縮することによって空いた時間を事業者からの指揮命令を受けない自分のための時間として使えることです。首都圏では片道90分の通勤は普通であり、この場合通勤のために使う時間は1日3時間になります。制度が就業時間を自由に設定できる仕組みになっている場合は、自分のライフスタイルに合わせた形で働けることも利点です。子供の世話や高齢者の介護に自分の生活リズムを合わせることが必要な労働者にとっては歓迎すべき制度でしょう。

 問題なのは、とくに自宅での勤務の場合、仕事に集中できる環境が設定しにくいことです。そのために作業が思うように進まなくても、管理監督者から求められる仕事の質・量は変わらないので、成果を出すには時間外の夜の作業、すなわち残業をしなければならなくなるというリスクがあります。自宅ではなく、サテライトオフィスで作業をすることにすれば、このリスクには対処することができます。

 ところで最近、このテレワークをしている労働者が健康問題を理由として、たとえば1か月を超えて休務した場合の復帰のさせ方が話題になっています。復帰に際して、休務前と同じくテレワーク制度の利用を認めるかどうかという問題です。

 労働契約の建前からすれば、理由は何であれ、労務を提供できない労働者に対しては労働契約を終了してよいのですが、わが国では、健康問題がその理由になっている場合、契約の終了を猶予して就業を一時的に免除し、一定期間、健康状態の回復に専念させることが事業者に求められています。健康を回復した労働者は、復帰の意志を事業者に伝え、治療医から復帰可能であるとの診断を受けなければなりません。それを受けて、事業者は産業医もしくはそれに代わる医師の意見をきき、復帰の可否を判断します。この判断は事業者が行うべきものです。例外はもちろんありますが、元の職場で、週5日間の定時の就業と休務前の業務遂行ができることがその判断の原則となる基準です。通勤が自力で安全にできることも必要です。

 この原則で判断すれば、休務前にテレワークをしていた労働者は、テレワーク制度を使って復帰することができます。ところが、復帰に際しては、医師による就業上の措置に関する意見が出され、事業者によって業務負荷の軽減が行われることが少なくありません。健康上の問題がメンタルヘルス不調である場合には、その頻度が高くなります。

就業上の措置として多いのは、時間外勤務の制限、出張の制限、営業担当者の顧客対応の制限、納期の短い業務(時間を制限された業務)の制限などですが、これにきちんと対応するには、管理監督者が労働者の勤務遂行状況と健康状態を確認できることが必要です。テレワークでもこれができないわけではありませんが、ただでさえ多忙な管理監督者にはさらなる負荷がかかります。

 メンタルヘルス不調で休務し職場復帰を希望する労働者のなかには、「週5日の通勤は負荷が大きいので、可能な限りテレワークにしたい」と考える者もいます。これは週5日の通勤には耐えられない回復状態であることを本人が認識している可能性を示しているとも考えられるため、復帰可と判断してよいかという問題を生じます。少なくとも休務前の通勤回数で復帰できるまで就業可の判断をしないとの考えもあり得ます。

テレワークの画像

 反対に、下肢の骨折で休務している場合には、回復の過程で両松葉杖を使用すれば歩行ができる期間が必ず生じます。両松葉杖を使っての通勤には転倒の危険があるので、「通勤が自力で安全にできる」という原則に反します。論理的には、復帰させるのであれば何らかの方法で安全な通勤を確保することが必要です。テレワークはこの対策としては有用です。

 テレワークの広がりは、このような問題を新たに生じさせており、ケースバイケースの扱いが必要なようにもみえるのですが、それでは現場が混乱します。どう取り扱うかの原則について衛生委員会で審議し、取り決めをしておくことが望まれます。

 
 
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