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『河野慶三コラム』人事・総務の方へ

第16回 メンタルヘルス不調者の労災認定(2017年)

※2018年8月14日記事修正済み。

1. 精神障害

 去る7月6日に厚生労働省から、2017年1年間の「精神障害の補償状況」が発表されました。結果はつぎのとおりでした(表も参照)。

精神障害の補償状況

精神障害の補償状況 脳と心疾患と精神障害の労災状況のまとめ(厚生労働省)から作成

註1 自殺には未遂を含む。
註2 認定件数は当該年度に請求されたものとは限らない。認定件数は支給決定件数である。
註3 認定率=認定件数÷決定件数×100

「脳・心疾患と精神障害の労災補償状況のまとめ」(厚生労働省)から作成

 

請求件数

1,732件

決定件数

1,545件

認定件数

506件

※認定率

32.8% (※認定率は認定件数を決定件数で割って得た値)

 表に示したとおり、請求件数は、2010年の1,181件以降毎年増加しており、もっとも多かった2016年の1,586件を146件うわまわっていました。請求件数は、本人またはその遺族が精神障害の存在を認識し、それが労災に該当すると考えて行動を起こした者の数です。したがって、認定されるかどうかはともかく、その増加は、企業におけるメンタルヘルス不調者数が増加していることを示します。
 2010年以降の精神障害認定件数をみると、2012年に475件に急増し、その後2016年までは400件台で推移していました。2017年は2016年の498件を8件うわまわり500件台になりましたが、現時点では変動範囲内の変化と考えてよさそうです。 一方、認定率は、2016年の36.8%と比べ4.0ポイント低くなっていました。2010年以降の認定率をみると、2011年に30%を超えたものの、それ以降は30%台での変動が続いています。

 
メンタルヘルス不調者の画像

 精神障害認定者を年齢別にみると、40歳台が最多で158件(31.2%)、30歳台131件(25.9%)、20歳台114件(22.5%)、50歳台82件(16.2%)の順でした。30歳以上50歳未満で57.1%を占めていることになります。また、20歳台の若年者が全体の4分の1近くを占めていることが注目されます。若年労働者のメンタルヘルス不調は多くの例で「適応障害」と診断されており、発生予防と発症者への適切な対処法の模索が続いています。

 精神障害認定者の1か月平均の時間外労働時間は、100時間以上が151件で29.8%となっていました。80時間以上とした場合は184件で36.4%でした。それに対し40時間未満は110件(21.7%)でした。長時間労働とは無関係な事例が5分の1を占めていることになります。

 そこで、精神障害認定者を出来事別にみると、頻度別の順位はつぎのようになっていました。

  1. ひどい嫌がらせ、いじめ、暴行 88件(17.4%)
  2. 仕事内容・仕事量の大きな変化 64件(12.6%)
  3. 悲惨な事故や災害の体験・目撃 63件(12.5%)
  4. 特別な出来事         63件(12.5%)
  5. 2週間以上にわたる連続勤務  48件 (9.5%)
  6. 月80時間以上の時間外勤務   41件(8.1%)
  7. セクシャルハラスメント    35件(6.9%)

 Cの特別な出来事は、認定基準で心理的な負荷が極度のものとして例示されている項目です。今回の発表ではCについての内容別データが示されていないので、これをはずした結果でみると、長時間労働はDEを合わせた89件(17.6%)に対し、ハラスメントに該当する@Fを合わせると123件(24.3%)となりました。メンタルヘルス不調の背景要因が明らかに拡大していることがわかります。

 

2. 自殺

 自殺(未遂を含む)については、つぎのとおりでした。

請求件数

221件

決定件数

208件

認定件数

98件

認定率

47.1%

 自殺の請求件数は、2014年の213件から2015年:199件、2016年:198件と減少していたのですが、2017年は2014年を超え221件まで増えました。自殺の労災請求を行う者は自殺者の遺族および自殺未遂者なので、2017年の結果は、労働者の自殺問題も収束方向には向かっていないことを示しています。
 また認定率は、2012年に45.8%となり、それ以降は40%台内での変動が続いています。このところは大きくは変わっていません。

 
 
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